「憲法研究会「憲法草案要綱」現代語訳」の版間の差分
提供: 日本国憲法の再誕
(→補則) |
|||
(同じ利用者による、間の3版が非表示) | |||
64行目: | 64行目: | ||
:大審院長は公選とし、国事裁判所長を兼務する。 | :大審院長は公選とし、国事裁判所長を兼務する。 | ||
:大審院判事は第二院議長の推薦により第二院の承認を経て就任する | :大審院判事は第二院議長の推薦により第二院の承認を経て就任する | ||
− | : | + | :一、行政裁判所長、検事総長は公選とする。 |
− | : | + | :一、検察官は行政機関から独立する |
− | : | + | :一、無罪の判決を受けた者に対する国家補償は十分にしなければならない。 |
− | == | + | == 会計および財政 == |
− | : | + | :一、国の歳出歳入は各会計年度ごとに詳細明確に予算に規定し、会計年度の開始前に法律をもってこれを定める。 |
− | : | + | :一、事業会計については、毎年事業計画書を提出し議会の承認を受けなければならない。 |
− | : | + | :特別会計は事業会計についてのみこれを設けることができる。 |
− | : | + | :一、租税を課し税率を変更する際は、一年ごとに法律をもってこれを定めなければならない。 |
− | : | + | :一、国債その他予算に定めたものを除くほか、国庫の負担となる契約は一年ごとに議会の承認を受けなければならない。 |
− | : | + | :一、皇室費は一年ごとに議会の承認を受けなければならない。 |
− | : | + | :一、予算はまず第一院に提出しなければならない。その承認を経た項目および金額については、第二院はこれを否決することができない。 |
− | : | + | :一、租税の賦課は公正でなくてはならない。消費税を偏重して国民に過重の負担を負わせることは禁止する。 |
− | : | + | :一、歳入歳出の決算はすみやかに会計検査院に提出しその検査を経た上でこれを次の会計年度に議会に提出し政府の責任解除を求めなければならない。 |
− | : | + | :会計検査院の組織および権限は法律でこれを定める。 |
− | : | + | :会計検査院長は公選とする |
== 経済 == | == 経済 == | ||
− | : | + | :一、経済生活は国民各自にとって人間らしい健全な生活をさせることを目的とし、正義、進歩、平等の原則に適合する必要がある。 |
− | : | + | :各人の私有ならびに経済上の自由はこの限界内において保障される。 |
− | : | + | :所有権は同時に公共の権利に役立たなければならない義務を要する。 |
− | : | + | :一、土地の分配および利用はすべての国民に健康な生活を保障できるように行われなければならない。 |
− | : | + | :寄生的土地所有ならびに封建的小作料は禁止する。 |
− | : | + | :一、精神的労作、著作者、発明家、芸術家の権利は保護されなければならない。 |
− | : | + | :一、労働者その他一切の勤労者の労働条件改善のための結社ならびに運動の自由は保障されなければならない |
− | : | + | :これを制限または妨害する法令契約および処置はすべて禁止する。 |
== 補則 == | == 補則 == | ||
− | : | + | :一、憲法は立法により改正する。ただし議員の三分の二以上の出席および出席議員の半数以上の同意を必要とする。 |
− | : | + | :国民請願に基づき国民投票で憲法の改正を決する場合においては、有権者の過半数の同意があることを必要とする。 |
− | : | + | :一、この憲法の規定ならびに精神に反する一切の法令および制度はただちに廃止する |
− | : | + | :一、皇室典範は議会の決議を経て定めなければならない。 |
− | : | + | :一、この憲法公布後、遅くとも十年以内に国民投票による新憲法の制定をしなければならない。 |
2015年4月29日 (水) 10:22時点における最新版
1945年に民間で改憲案を提示した憲法研究会「憲法草案要綱」の原文が、国会図書館の「日本国憲法の誕生」にあります[1]。文語文で分かりにくいため、参考に現代語訳してみます。
憲法草案要綱
憲法研究会案
高野岩三郎、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄、室伏高信、鈴木安蔵
根本原則(統治権)
- 一、日本国の統治権は日本国民より発する
- 一、天皇は国政を自らせず、国政の一切の最高責任者は内閣とする
- 一、天皇は国民の委任によりもっぱら国家的儀礼を司る
- 一、天皇の即位は議会の承認を経るものとする
- 一、摂政の設置は議会の議決による
国民権利義務
- 一、国民は法律の前に平等であり出生または身分に基づく一切の差別はこれを廃止する
- 一、爵位勲章その他の栄典はすべて廃止する
- 一、国民の言論学術芸術宗教の自由を妨げるいかなる法令も発布できない
- 一、国民は拷問を加えられることはない
- 一、国民は国民請願国民発案および国民表決の権利を有する
- 一、国民は労働の義務を有する
- 一、国民は労働に従事しその労働に対して報酬を受ける権利を有する
- 一、国民は健康にして文化的水準の生活を営む権利を有する
- 一、国民は休息の権利を有する。国家は最高八時間労働の実施勤労者に対し有給休暇制、療養所、社交教養機関を完備しなければならない
- 一、国民は老年疾病その他の事情により労働不能に陥った場合、生活を保証される権利を有する
- 一、男女は公的ならびに私的に完全に平等の権利を享有する
- 一、民族人種による差別を禁ずる
- 一、国民は民主主義ならびに平和思想に基く人格完成、社会道徳確立、諸民族との協同に努める義務を有する
議会
- 一、議会は立法権を掌握する。法律を議決し、歳入及び歳出予算を承認し、行政に関する準則を定め、およびその執行を監督する。条約で立法事項に関するものはその承認を得なければならない。
- 一、議会は二院で構成される
- 一、第一院は全国一区の大選挙区制で満二十歳以上の男女平等直接秘密選挙(比例代表制)によって満二十歳以上の者から公選された議員で組織され、その権限は第二院より優先する。
- 一、第二院は各種職業ならびにその中の階層により公選される満二十歳以上の議員で組織される。
- 一、第一院において二度可決された一切の法律案は第二院で否決することができない
- 一、議会は無休とする。議会が休会する場合は常任委員会が職責を代行する
- 一、議会の会議は公開とする。秘密会は廃止する。
- 一、議会は議長ならびに書記官長を選出する
- 一、議会は憲法違反その他重大な過失の事由により大臣ならびに官吏に対する公訴を提起することができる。この審理のために国事裁判所を設ける。
- 一、議会は国民投票によって解散を可決されたときはただちに解散しなければならない。
- 一、国民投票により議会の決議を無効にさせるためには有権者の過半数が投票に参加した場合でなければならない
内閣
- 一、総理大臣は両院議長の推薦で決める。各省大臣国務大臣は総理大臣が任命する
- 一、内閣は外に対して国を代表する
- 一、内閣は議会に対して連帯責任を負う。その職にあるためには議会の信任がなければならない。
- 一、国民投票で不信任を決議されたときは内閣は辞職しなければならない。
- 一、内閣は官吏を任免する
- 一、内閣は国民の名において恩赦権を行使する。
- 一、内閣は法律を執行するための命令を出すことができる
司法
- 一、司法権は国民の名により裁判所構成法および陪審法の定めるところにより裁判でこれを行う。
- 一、裁判官は独立にしてただ法律にのみ服する
- 一、大審院は最高の司法機関にしてすべての下級司法機関を監督する
- 大審院長は公選とし、国事裁判所長を兼務する。
- 大審院判事は第二院議長の推薦により第二院の承認を経て就任する
- 一、行政裁判所長、検事総長は公選とする。
- 一、検察官は行政機関から独立する
- 一、無罪の判決を受けた者に対する国家補償は十分にしなければならない。
会計および財政
- 一、国の歳出歳入は各会計年度ごとに詳細明確に予算に規定し、会計年度の開始前に法律をもってこれを定める。
- 一、事業会計については、毎年事業計画書を提出し議会の承認を受けなければならない。
- 特別会計は事業会計についてのみこれを設けることができる。
- 一、租税を課し税率を変更する際は、一年ごとに法律をもってこれを定めなければならない。
- 一、国債その他予算に定めたものを除くほか、国庫の負担となる契約は一年ごとに議会の承認を受けなければならない。
- 一、皇室費は一年ごとに議会の承認を受けなければならない。
- 一、予算はまず第一院に提出しなければならない。その承認を経た項目および金額については、第二院はこれを否決することができない。
- 一、租税の賦課は公正でなくてはならない。消費税を偏重して国民に過重の負担を負わせることは禁止する。
- 一、歳入歳出の決算はすみやかに会計検査院に提出しその検査を経た上でこれを次の会計年度に議会に提出し政府の責任解除を求めなければならない。
- 会計検査院の組織および権限は法律でこれを定める。
- 会計検査院長は公選とする
経済
- 一、経済生活は国民各自にとって人間らしい健全な生活をさせることを目的とし、正義、進歩、平等の原則に適合する必要がある。
- 各人の私有ならびに経済上の自由はこの限界内において保障される。
- 所有権は同時に公共の権利に役立たなければならない義務を要する。
- 一、土地の分配および利用はすべての国民に健康な生活を保障できるように行われなければならない。
- 寄生的土地所有ならびに封建的小作料は禁止する。
- 一、精神的労作、著作者、発明家、芸術家の権利は保護されなければならない。
- 一、労働者その他一切の勤労者の労働条件改善のための結社ならびに運動の自由は保障されなければならない
- これを制限または妨害する法令契約および処置はすべて禁止する。
補則
- 一、憲法は立法により改正する。ただし議員の三分の二以上の出席および出席議員の半数以上の同意を必要とする。
- 国民請願に基づき国民投票で憲法の改正を決する場合においては、有権者の過半数の同意があることを必要とする。
- 一、この憲法の規定ならびに精神に反する一切の法令および制度はただちに廃止する
- 一、皇室典範は議会の決議を経て定めなければならない。
- 一、この憲法公布後、遅くとも十年以内に国民投票による新憲法の制定をしなければならない。